沿岸産業にとっては厄介者のクラゲですが、近年素材として注目を集めており、欧米を中心にクラゲを利用するベンチャーが続々と立ち上がっています。厄介者ではなく、価値のある存在として再定義される日も近いかもしれません。ここでは、クラゲの可能性についてご紹介します。
中華料理の「クラゲの冷菜」、実は本物のクラゲです。中国では医食同源の考え方のもと、古来よりヘルシーな高級食材として用いられてきました。華僑が渡った東南アジアでも消費文化がある上、日本でもASMRが流行するなど、私たちの生活に馴染み深いものとなっています。中華クラゲだけでなく、新たな洋風のレシピも提案されており(*注1)、くらげクラフトと共に新たな食体験をもたらしてくれることでしょう。
クラゲの95%以上は水分でできていますが、残りはコラーゲンを中心とするタンパク質です。近年、クラゲから抽出したコラーゲンの有効性に注目が集まっており、特に化粧品領域においてスタートアップが続々と立ち上がっています。従来の動物由来のコラーゲンに比べて親水性が高く、抗酸化作用や紫外線保護効果が見られるという報告もあります(*注2)。
アメリカで販売されている、クラゲ由来タンパク質のサプリメントが流行しています。記憶力改善を謳い人気を集めていますが、その効果は根拠がなく、有効性に関する宣伝が禁じられたようです。とはいえ依然として人気があり、クラゲ利用の市場の可能性が垣間見えます。本当に有効性のあるクラゲ由来成分のサプリメントが発売される日も近いかもしれません。
クラゲ由来コラーゲンが線維芽細胞や骨芽細胞の生存・増殖を良好にサポートする(*注3)ことや、創傷治癒の促進が観察された事例(*注4)などが報告されており、再生医療分野への応用の期待が高まっています。哺乳類由来でないことからBSEなどの感染症リスクが低いことも特徴として挙げられます。臨床試験や量の確保などのハードルはあるものの、抽出法などの検討も進められており(*注5)今後の動向に期待ができます。
*注1:GoJelly European Jellyfish COOKBOOK
*注2:Fan, J., Zhuang, Y., & Li, B. (2013). Effects of collagen and collagen hydrolysate from jellyfish umbrella on histological and immunity changes of mice photoaging. Nutrients, 5(1), 223–233.
*注3:Mearns-Spragg, A., Tilman, J., Tams, D., & Barnes, A. (2020). The biological evaluation of jellyfish collagen as a new research tool for the growth and culture of iPSC derived microglia. Frontiers in Marine Science, 7, Article 689.
*注4:Felician, F. F., Yu, R.-H., Li, M.-Z., Li, C.-J., Chen, H.-Q., Jiang, Y., Tang, T., Qi, W.-Y., & Xu, H.-M. (2019). The wound healing potential of collagen peptides derived from the jellyfish Rhopilema esculentum. Chinese Journal of Traumatology, 22(1), 12–20.
*注5:Hu, B., Zong, Z., Han, L., Cao, J., Yang, J., Zheng, Q., Zhang, X., Liu, Y., & Yao, Z. (2025). Jellyfish collagen: A promising and sustainable marine biomaterial with emerging applications in food, cosmetics, and biomedical — A review. Applied Food Research, 5, 101165.